電力自由化の海外事情
海外の事例から学ぶ
2016年に電力自由化が迫っている我が国において、諸外国の過去の事例を参考に学べるポイントはないのでしょうか。
欧米の先進国をはじめ、諸外国では電力自由化に関するさまざまな先行事例があります。
成功事例のみならず失敗事例を参考に、これから我が国で起こり得る電力自由化で生じるメリットやデメリットを見ていきましょう。
また、電力自由化の規制緩和によって電力業界全体が競争環境に入り、一般消費者にとっては電気料金の値下げやサービス品質の向上が期待されていますが、
海外の先行事例ではどのような変遷を辿っているのか見ていきましょう。
イギリスの事例

諸外国に先駆けていち早く電力自由化の全面解禁に乗り出したのは伝統あるイギリスでした。
イギリスは、英国病とも呼ばれる長期不況を乗り越えるためにさまざまな分野で規制緩和が進み、競争環境の下地が整えられてきました。
電力業界においても、1999年には諸外国に先駆けて規制緩和による電力の完全自由化が導入されています。
既存の電力公社を3つの発電会社と1つの送電会社に分社化した上で民営化を推し進め、50社前後の新規参入を認めました。
発電した電力を強制的に卸売市場に集めて販売するという方式を取りましたが、大手企業が価格を操作できる仕組みであったため、
開始数年間は電気料金が高いままで自由化の恩恵を一般家庭が享受することは叶いませんでした。
新電力制度のNETAやBETTAが採用され、競争的かつ効率的な取引制度となって以降、健全な競争環境が整いましたが、発電のための燃料費が高騰した影響で、けっし
て格安料金で電力を提供出来ているとは言い切れない結果となっています。
アメリカの事例

我が国において最も馴染み深い海外として、アメリカも電力自由化を実施しています。
90年代後半から2000年代前半にかけて各州で電力の全面自由化が導入されてきました。
市場原理に伴う競争環境の激化が進み、新電力として新規参入した企業が増えましたが、成功を収めている事例とは言い切れません。
猛暑の影響や天然ガスをはじめとする燃料費の上昇によって電力会社が十分な発電を行うことが出来ず、カリフォルニア州の停電頻発をはじめ各州で大規模停電が発生する事態となりました。
また、発電のためのコストが直接消費者利用の料金に上乗せされることとなり、従来よりも高額な電気料金を支払わなければならなくなりました。
このように、海外の事例では必ずしも成功しているとは言い切れない事象が多く起きています。
2016年の電力自由化では、こうした事例を研究した上でスムーズな導入が期待されます。